都市遊牧民のホテルライフ

2005年02月04日

パークハイアット東京の、朝

去年、何気に「 BAZAR」という女性誌を手に取った。
もちろん、その雑誌を定期購読しているわけなどないが、
その特集、「海外デザイナーの愛する東京」が気になった。

その雑誌を見たのは、行きつけの床屋だった。
その店が定期購読していつも並べているので、
要は、ひまつぶしにたまたま手に取ったということだ。

いきなり話はそれるのだが、
この床屋、お母さんと娘さんたち3人でやっておられる
いわゆる家族経営のアットホームなお店である。

下の娘さんには生まれたばかりの赤ん坊がいて、
ベビーカーに乗っけて、子守りをしながらの散髪なので、
絵に描いたような家庭的な雰囲気が満ち溢れている。

しかし、その“超”アットホームな空気の中で、
待ち合いの椅子が、なぜか、 LC2なのだ。
そう、言わずと知れたル・コルビュジェの名作である。

混んでいる時にはそこで待たせていただくのだが、
そのあまりにも普通の家庭的な空間の印象と、
モダンデザインの古典とも言うべき家具の存在感が
妙にフィットして、何とも言えず気持ち良かったりする。

お母さん家族の人格がにじむ空気の成せる業か、
それとも巨匠のデザインの包容力の深さゆえか、
ここで、その所以を解読する愚は犯さないが、
(というか、できないので・・・・・)
とにかく、何はともあれ、私はここが好きなのだ。

話を本題に戻そう。
「海外デザイナーの愛する東京」である。
その中の質問に「お気に入りのホテル」
という項目があり、興味深く読んでみた。

ダントツで、「パークハイアット東京」が 1位だった。
建築は、新宿副都心、丹下健三大先生のアレ、ね。
もちろん、内部は外観のように大味ではない。
「自分でも泊まったからその良さは分かるけど、
ここまで群を抜いているとは・・・ほぉ〜」と驚いた。

もちろん、ダントツ 1位にはいろんな理由があるだろう。

大型ホテルにはめずらしいエントランスの静けさ。
エレベーターで上昇し、扉が開いたときの爽やかさ。
明るいラウンジを抜け、レストランを横目に通り、
突き当りを曲がった廊下のライブラリー的落ち着き。
ようやくたどり着くこじんまりとしたフロントの優しさ。
小粋で行き届いたコンシェルジェサービスの充実。
客室のしつらえをあげても、枚挙にいとまがない。

しかし、私の記憶に残っているのは、
そういった大掛かりな空間的仕掛けではなかった。

宿泊当日、友人から電話があった。
その時、思わず口をすべらせてしまった。

「今日、パークハイアットに泊まるもんね!」

と言ったが最後、悪夢のはじまり。
ゴージャスな都市的ホテルライフは夢と消え・・・

酒ビン片手の友人 3人が押し掛けてきた。
結果、大酒飲んで、ぐでんぐでんに酔っ払い、
絶賛だと聞く風呂にも入らず、メシも食わず、
その上、服も着たままで寝てしまっていた。

そして、あの二日酔い特有のけだるい覚醒、
ガンガンする頭が何かを聞いていた。

「ん?目覚まし時計・・・か・・・もう、朝?」

フラフラの身体を無理矢理に起こしつつ、
「何も見ず、飲んだだけか・・・高っかい一日」と、
とにかくベルを止めようとした私が見たものは!?

びっくりしないでね。(誰もびっくりしないか)

BRUNの目覚まし時計?

そう、どこか懐かし〜い郷愁漂う、あの

「四角い、 BRAUNの、黒い、目覚まし時計」

だったのです。

「えっ?ブラウンの普通の目覚まし時計?」

あの、ホテルでよく目にする、あれ、
ベッドサイドボードに埋め込まれたデジタルの、
目覚まし設定も面倒くさく、かつシャラクサイ、
イライラの元でしかない、あの時計でなく、その・・・・

「。。。。。。。。」

それはきっと、何気なく置かれたものではなく、
ここをデザインした人が、紛れもない意思と、
どこまでも明確な確信を持って置いたものだ。

「ホテルのデザイン」というものに対する
私の眼差しは、確かに、この瞬間、変わった。

「やるやん。」